(1620年代)
17世紀フランス絵画の中心に位置するのは、古典主義の創始者ニコラ・プッサンです。プッサンは人生のほとんどをローマで過ごしました。プッサンは、ローマで古典芸術の偉大さと、盛期ルネサンスの形象の高尚な美しさに接しました。作品「リナルドとアルミーダ」は、当館コレクションの自慢であり、プッサンがティツィアーノの芸術を押し広げていた時期の作品です。ティツィアーノの手法に接したことで、プッサンの才能は、より生きいきとした側面を開花させることができました。彩色を重視するティツィアーノの手法は、プッサンが画家として成長するために大きな役割を果たしました。「リナルドとアルミーダ」の絵の主題は、16世紀イタリアの詩人トルクァート・タッソの叙事詩「エルサレム解放」から借用したものです。叙事詩は、十字軍の歴史にまつわるもので、そこには、つぎのような一節があります。ムスリム女性アルミーダの領地に、十字軍兵士リナルドが入り込みました。領主のアルミーダは騎士リナルドを殺害しなければならなかったにもかかわらず、その美貌に魅せられ、騎士リナルドに恋して自分の邸に連れ去ってしまいます。十字軍の歴史から採用されたこのエピソードを、画家は、古代神話のモチーフとして解釈しました。この絵は私たちを魅惑的な美と高尚な詩の世界に引き込みます。主人公らの理想的な美しさは、古典古代の彫刻を思わせます。すべての取り込んでしまう愛の悦びの感情は、登場人物のだけでなく、周囲の自然物の反響にも、具現化されています。画家は、風景を、力強い自然の不可抗力のあからさまな発露として提示しており、出来事はその中で起こっています。瓶から水を注ぎだしている裸の力強い老人は、川の化身で、絵の構成のなかに有機的に取り入れられています。2輪馬車を引くアルミーダの馬たちは、雲の上を駆けていこうとしており、乙女らがかろうじて抑え込んでいますが、その姿は太陽神ヘリオスの馬に似ています。太陽はリナルド、アルミーダ、そして騎士の甲冑で遊んでいるキューピッドたちのうえに注がれています。構図は分かりやすく整っています。滑らかな音楽のような律動感が、あらゆる形と線を1つにし、構図の要素の1つひとつを相互に調和させ、構図全体に調和に満ちた端正さを与えています。リナルドの甲冑、樹木、土、アルミーダの2輪馬車、裸の人体の、統一的な金色の色調は、ところどころに見られる主張の強い純色によって、さらに豊かに感じられるようになります。リナルドの赤いマントとアルミーダの青いマントが純色です。このふたつの純色は、空の青色と2輪馬車の近くにいる乙女たちの服の赤色と、リズミカルに共鳴しあっています。
この絵の色彩は、アルミーダのなかに湧きあがる、小躍りさせるようなしあわせの感情に、満たされています。芸術的な意味の合理的な明瞭さと抒情的なインスピレーションが、完全に1つに融合しています。



