(1732年~1734年)
フランス絵画において、もっとも華やかなロココ派の表現者は、フランソワ・ブッシェでした。ブッシェはルイ15世の国王筆頭画家でした。作品「ヘラクレスとオンファレ」は、論争の余地のないブッシェ初期の傑作です。その主題は、古代ギリシャの作家アポロドーロスや古代ローマの詩人オウィディウスが物語った古代神話に遡ることができます。古代の伝説によれば、自らの意思ではなかったとはいえイフィトという若者を殺害した罪について、罪の贖いをするよう、ヘラクレスは神々に命ぜられていました。たくましい英雄は、最高神ゼウスによって、リディアの女王オンファレに奴隷として売り渡され、女性がするような仕事をさせられていました。
女王が、ヘラクレスのものだったライオンの毛皮をまとい、棍棒を握っているのに対し、ヘラクレスは女性の衣服を着ています。しかし最後には、ヘラクレスは女王の寵愛を得ることに成功します。画家の手により、古代の神話が、波乱万丈の恋愛のワンシーンになっているのです。この絵は、活気に満ち、情熱的なルーベンスの絵を思わせるような印象を与えますが、そのテーマは典型的なロココ様式のものです。ブッシェの絵のテーマには、つねに刺激的な隠された意味があって、情事の進行や、思いがけない結末が含意されています。金箔やあふれんばかりの彩りに輝く、室内調度品の手の込んだ装飾のなかにあって、ブッシェの絵は、洗練された表現力に富むアクセントとして受け容れられたのです。作品の、鮮やかで盛りだくさんの彩色は、祝祭の雰囲気とともに肉欲的な気分もかきたてます。



