(1522年~1523年)
ルーカス・クラナッハ(父)は、ルネサンス時代のドイツもっとも偉大な画家の1人です。クラナッハ(父)の作品の多くの部分を占めているのが聖母の像です。聖母は、モスクワの絵のなかにも登場します。作品「聖母子像」は、損傷を受けた状態で発見され、構図の下の部分と右の部分が失われています。失われた部分にはブドウの木が絡まった東屋が描かれていました。この画家固有の輝くような彩色が、作品の表面に特別な貴重さの感覚を与えています。
聖母のやさしい姿が、クラナッハ(父)の手になると、威厳、女性らしいやわらかさ、霊的な感激を帯びています。ドイツ特有の雄大な針葉樹林を背景にすることで、人物の優美な輪郭が際立っています。クラナッハ(父)が自然美を発見したことは、ヨーロッパ北部の芸術にとって、実在する地上的悦びに対する新しい感覚の基となりました。世界は、調和のとれた神の創造物として捉えられ、人間は宇宙の中心ではなく、その一部にすぎないものとして立ち現れます。ここが、北方ルネサンスがイタリアのルネサンスと異なる点です。寓話的な意味を有する細部を、きわめて精巧・精密に描きだして表現しようとするクラナッハの関心は、このような世界観とつながっています。1房のブドウは、キリストの血と、キリストが将来、犠牲的な死を迎えることを象徴しています。岩からほとばしっている水の流れは、キリスト教信仰にがもたらす新たな生の源を表わしています。山や岩は、高邁な魂、揺るぎない信仰の固さを表現しています。






